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2009.02/19 [Thu]
独立記念日 #34

7月4日、独立記念日
特別に予定を立てていたわけでもなく、独立記念日を祝う夜空の花火でも楽しみながら、家でのんびりと過ごすつもりだった。
昼頃だっただろうか、妻の友人のジェーンが遊びに来た。軽くランチを取り、後片付けを済ませると、妻達は楽しげに会話をしながら、ブレスレット作りをはじめた。
昼食の残りをスクラッフィーにあげようと、ジェーンが座っていた椅子の下に置くとスクラッフィーはご飯をたいらげ、その後椅子の下で休んでいた。
スクラッフィーは満足げに妻達の会話に耳を傾け、時には「ウーウー」と声を出しながら
妻達の会話に参加していた。
ブレスレット作りを終えると、妻はジェーンを車の所まで見送りに行き、私は用事があったので地下室に向かった。
その時、一度だけスクラッフィーに与えたことのある歯をきれいにする犬用のビスケットがふと目にとまった。一度はスクラッフィーの前庭障害との関連を疑ったが、それをきちんと関連付けるものは何もなかった。最初のめまいの症状が起きたのは数ヶ月前だった。
それ以前にはこの手のビスケットは与えたことがなかったのは確かだった。
そんなことを考えながら、乾燥機から洋服を取り出していた。妻がジェーンを送り玄関から入ってきた音がした。
その時だった、カレンの動揺した声が響き渡った。
「スクラッフィーが呼吸出来ないで苦しそうなの!舌の色も真っ青だわ」
「舌の色が真っ青?」その言葉しか耳に入ってこなかった・・
舌の色が真っ青なんてよほどの緊急事態じゃないか!
体全身が凍りつき、短刀で胸を一突きされたような感じだった。
私は急いで1階のキッチンに駆けつけた。
スクラッフィーはキッチンの床にぐったりと寝そべり、ゼーゼーと苦しそうに呼吸をしていた。
いつもとは様子が明らかに違い、異常に苦しそうな様子だった。でも、私には舌の色はピンク色に見えた。
この時だけは、さすがのカレンでも動揺して舌の色すらも見間違えたのであろう・・いや、そう願いたかった。照明のせいだったのかもしれない・・
そして、スクラッフィーが排泄障害を起こしているのに気がついた。
舌の色には関係なく、これは明らかに緊急事態だ。
私は床に座り込み、スクラッフィーを軽く抱き寄せた。
このまま息を引き取ってしまうんではないかとも考えていた。
すると、妻が自宅から20分ほどの場所にある動物緊急病院に運ぶか確認してきた。
何が一番良いのか考える時間も余裕もなく、すぐに病院に連れて行くことにした。
スクラッフィーをトラックの後部座席に乗せると、私はスクラッフィーの隣に座った。
こんな状況なのに、トラックに乗ったスクラッフィーの表情は満足そうだった。
これが最後のドライヴになるのか・・
大好きなトラックでのドライヴがこの世での最後の楽しい思い出になるのか・・
スクラッフィーも事態はわかっていたようだった。
スクラッフィーは私の顔を見つめては、すぐに顔を私の足の間にうずめた・・
何度も何度も同じ動作を繰り返していた。
こんな状況の中で、ようやく私の想いはスクラッフィーに通じていたことに気がついた。
私がどんな存在かも、私がスクラッフィーをどんなふうに思い続けて来たのかも理解してくれていたようだった。
それはスクラッフィーの瞳を見ればわかった。
頼れるのは私しかいないということもスクラッフィーは理解していた。
スクラッフィー自身も戦っていた、でも乗り越えられそうもないことも感じていたのかもしれない。
それでもスクラッフィーの私を見つめる瞳には自信が満ち溢れていた、
「パパなら助けてくれる、必ず・・」と。
あの時のスクラッフィーの眼差しは私が生きている限り、一生忘れることはないであろう。
助けを懇願していたわけではない。そんなことをする必要はないとスクラッフィーはわかっていたからだ。私の膝に寄り添うスクラッフィーは何度も何度も私のにおいを確かめ、私が傍にいることだけを確認していた。
「大丈夫だ・・傍にいるよ。心配することはないよ」
でも、心の中ではこんなにも無力な自分は今までの人生の中で味わったことがなかったのが正直な気持ちだった。
ただ、この気持ちをスクラッフィーが感じとらないことだけを心から願っていた。
スクラッフィーが安心できるようにしてあげなければならない・・そう考えるようにしていた。
スクラッフィーの呼吸を聞くたび不安になったが、舌の色はまだきれいなピンク色だった。
それだけが私にかすかな望みを抱かせてくれた。
独立記念日 35話へ続く・・
- at 20:45
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